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「だいぶ、様子が変りましたな」
「お忘れかもしれませんが、高間道平の息子でございます。――今度、医者としてこの町へ戻りました者で――」
と、舌ざはりの悪いものでも口にしたやうな調子で、練吉はぽつんと云つた。
真黒い顔の男が傍によつて訊いた。
「さう、カワラケ、カワラケ云ひなさんな」
「あの山に田地を注ぎこんで裸になつたのは三人、わしも知つとる」
「ホリウチ?」
「うむ、わしか」
「それあ、あつさりしていゝですな。こつちでは山車が生憎あいにくこはれて、満足なのは一つしかないんでね。あんまり淋しいからと云ふんで、こんな思ひつきをやらかしたらしいですがね」
むかしからおれとこの人とは仲よしだつた――それは押しかくすことのできない悦ばしさだつた。
房一が云ひかけると
高間医院の待合室で、彼等は馴れない薬の香を嗅ぎ、一様に重たい、沈んだ表情を浮かべて、或る者は黙つて放心したやうに戸外を眺め、或る者は低いゆつくりした声でぽつりぽつり話し合ふのであつた。汗ばんだ匂ひや土の香、洗ひざらしの紺の野良着、熱の気配――それらは或るたとへやうもない倦怠と肉体的な不快を呼び起させる何物かによつてみちみちていた。それは農夫達の生活の一部が方々からこの待合室に持ちこまれて、この一所に、陰鬱な空の気配や、石塊いしくれの多い山合ひの畑での労苦や、長い畦あぜの列や、それらのいつしよくたになつた重々しい雰囲気を再現しているやうに思はれた。
「うむ、何かあ」
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